理論５ オステオパシーはなぜ効果があるのか
オステオパシーはどのように効くか？
オステオパシーの特徴は手技による刺激を体の中で生理学的反応に変換することで効果を発揮します。そしてその効果の説明として、「自然治癒力を引き出す」という曖昧な謳い文句を目にしますが、実際のところ自然治癒力は目に見えるものではないし数字で測れるものではありません。
漠然と「自然治癒力というものがある」というのは理解していてもそれが高まると言われてもなかなか実感できないと思います。
では具体的にオステオパシーの治療がどのように体に影響して自然治癒力が引き出されるかを見ていきたいと思います。
オステオパシーはこのように効く！
まず「治癒」ということを考えていきましょう。
「治癒」といって一番イメージしやすいのはやっぱり傷口がふさがっていく過程じゃないでしょうか。子供の頃から擦りむいた場所にカサブタができて、それが自然に剥がれて治っていくという過程を誰もが経験していると思います。
この、「治癒」という過程において大切な要因は
・動脈血の流れ
・静脈血とリンパ液の循環
・神経の軸索輸送
の３つです。
この３つの一つでも欠けたら、どんな小さな傷口も治ることはありません。
つまり、オステオパシー治療によりこの３つの要因が治療前よりも活性化されていれば「自然治癒力が高まった」と言えます。
動脈血の流れ
動脈血の大きな役割は細胞に酸素を運ぶことであることは誰もが知っていることです。そして、その「血液の流れが悪くなることで肩こりや冷え性になる」と説明されます。
しかし、その「血液の流れが悪くなる原因」について説明しているところは一つもありません。
では、なぜ血液の流れが悪くなるのか？
原因の一つは鬱血ですが、これについては次回に書いていきます。
もう一つの原因は「交感神経」です。
交感神経は自律神経の一つで交感神経と副交換神経で体のあらゆる機能を制御しています。夜になったら眠くなったり、暑くなったら汗をかいたり、生きていく上で必要な体のコントロールを無意識に行うのが自律神経の役割です。
この自律神経はこのような重要な働きを自動で行なっている反面、無意識に体に異常をもたらせたりもします。肩がこってきたら目眩がしたり動悸がしたり、ストレスを感じると胃が痛くなったりするのも自律神経の影響です。
交感神経と血管
2つの神経の内、交感神経が体のすべての血管をコントロールしています。
ですから、巷であふれかえっている「副交感神経を活性化させて血行を促進する」というのは全くのデタラメです。
交感神経は通常の状態で血管を50％収縮させており、交感神経が働けば血管を閉めて血流を抑制します。逆に交感神経の働きを抑えれば血管が拡張して血流が促進されます。
血流を抑制することも体のある部分に血液を集めるためには必要な機能です。
しかし内臓からの異常信号、体の歪みによって異常刺激が脳に伝わると脳が錯覚して、交感神経が過剰に働き過ぎるという状態になります。
これにより血流が悪くなり冷え性や肩こりを引き起こします。
オステオパシー治療は体のバランスをとることで体から出る異常信号を解除し、体の情報を脳に伝える役目を持つ交感神経節へ軽い刺激を与えることで大脳辺縁系にアプローチして、働き過ぎる交感神経を抑える効果があります。
大脳辺縁系は体に加えられる刺激を良い刺激か悪い刺激かを判断する場所で、体に与えられる緩やかな刺激は大脳辺縁系から視床下部、下垂体へと影響を与え全身の交感神経の緊張を低下させる効果を引き起こします。
結果として体の血管が開いて全身の血流の促進、それによる筋肉の弛緩、細胞の活性化という効果が得られます。
逆に強すぎる刺激、速すぎる刺激は大脳辺縁系により侵害刺激として判断され、ストレスに対する反応を体に引き起こします。いわゆる防御反応です。
ストレスホルモンといわれるものを放出して血糖値を上げ、脳内麻薬を分泌させることで気持ちいい刺激と錯覚させてこれに抵抗します。
短時間であればそれほど悪影響は無いかもしれませんが、それが30分、1時間と続いていくと、慢性的な血糖値の上昇、脳内麻薬への依存、それによる精神の不安定などが起き、結果として症状の悪化、合併症などの原因になります。
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